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ご飯・空手・渓の日記


by 4433yoshimi
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住み人、知らず

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もう5年以上になるだろうか。お向かいの家に誰も住む人がいなくなってから。20年以上前にここに越してきた時は、ご夫婦とお嬢さんの3人住まいだった。それから5年ほどしておうちを新築され、10年ほど経った頃、お嬢さんが結婚していなくなってご夫婦だけに。毎朝、ご主人をお迎えに来る黒塗りのハイヤーが見えなくなったのは、それから5年ほど後のことだったろうか。
最初の異変はご主人だった。脳梗塞だったのだろうか、体が不自由になってリハビリの歩行が辛そうだった。次に、奥様の言動がおかしくなった。同じことを何度も語ったり、意味不明だったり。ご夫婦の言い争いもよく耳にしていた。でも、何もできなかったし、手を差し伸べることもなかった。一度だけ「助けてー!」という声が聞こえてお向かいに駆けつけると、ご主人が玄関に倒れて失禁していた。
「妻が、助けてくれないんです」
抱えて起こしたが、もう大丈夫だからと奥に消えた。どうやら奥様は家の中にいたようだった。
そんなことがあって心配していたが、ほどなくして二人の姿は見えなくなった。時折お嬢様がいらして家の掃除をしていた。

先週、お隣の家に数人の男性がやってきて、家の家具から何から一切合切運び出していった。きっと家は売られたのだろう。ご主人か奥様のどちらかが亡くなられたのかもしれない。ほんの目と鼻の先に住んでいて、こんな具合。都会の隣近所はこんなもんなのか。
うちの裏の家の奥様も、10年以上ひとり暮らしをしていたが、言動が変だなあと思い始めてしばらくすると、娘さんが同居するようになった。回覧板を持っていっても、話らしい話をすることもなく、事務的にすませるが、気がかりである。
最初に越してきた頃は、気遣って田舎から到来物があった時などはお持ちしたが、お返しに気を遣われている様子が見えてからやめた。
住み人、知らず_f0207325_1354102.jpg

人と人のつながりが薄くなったとは思うけれど、実家のある田舎に行ってもどうやら似たような状況のようだ。風のように人がやってきて、また風のように去っていく。そんな舞台を見ているようなご近所づきあい。困った時にはご近所よりも、しかるべき相談所や施設に頼る。顔と顔を見合わせるだけで多くのことを察することができるのに、黙して語らず。そんな時代に生きているのだなあ。

今度、お向かいにくる人はどんな人なんだろう。長い間不在だっただけに、住み人があってこその家だと思う。長く住んでくれる人だといいね、とお向かいの家に心の中で声をかける。
by 4433yoshimi | 2014-08-06 13:54