ご飯・空手・渓の日記


by 4433yoshimi
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渓のシメは神戸牛でした

源流を訪ねるようになって15年。これまで、深刻な生命の危機を感じたのは2回。北アルプスのアイサワ谷での遭難と、そして上信越国境の魚野川。2年前の魚野川では、足を乗せた岩が崩れて滑落し、ちょっとした窪みに頭が下、足が上の状態で大きな石を抱え、青い空を見上げたまま身動きができなくなった。このまま石の重みで内蔵がやられるか、力尽きて谷底に滑り落ちるか、というところを男性4人がかりで石を持ち上げてもらい、かろうじて脱出。石が重くてなかなか持ち上げられなかった時間は、たぶん10分足らずだったと思うのだが、30分にも、1時間にも思えた。
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魚野川は自然が豊かだが、標高が高いので害虫が少なく、私の釣り仲間の間では、毎年、お盆の頃に訪れることが恒例となっている。私は、もう10年以上通い詰めている渓だ。昨年は、残念ながら、初めて雨のせいで撤退。今年はリベンジのはずだったのだが、私は空手の合宿と日程が重なり、断念することにした。正直、ほっとした。3年前の事故がまだトラウマだったのだ。なんとなく胸騒ぎがして、いやな感じがしていたのだ。
ところが初参加の女性・レイコさんがエントリー。クライマーではあるが、沢には慣れていないとのことで、彼女のサポートをするため、合宿の方をあきらめることに。3泊4日のロング釣行なので、女性がひとりでは不安だろう。とはいうものの、気は進まなかったんだよ。

魚野川を遡り、最終日に山越えをして降りてくる志賀高原・高天原に車を1台デポし、もう1台の車で出発地の秋山郷・切明へ。標高差、約1000m。ここから3泊4日の旅の始まりだ。ザックを背負って川を遡りながら食料のイワナを釣り、野宿してまた翌日、イワナを釣りながら遡る。滝があれば、よじ登って越える。それが無理な場合は、脇の山肌を高巻きして滝上に降りる。大淵があれば岩壁をヘツって抜けたり、胸まで水に浸かって歩いたり、それがダメなら泳ぐっきゃないね、ハハハ。仲間達と助け合いながら、励まし合いながら和気あいあいと、時には歯を食いしばって。
源流釣りの魅力とは、壮大な自然を舞台にした冒険であることだ。わくわくドキドキの連続。毎年訪れていても、天気や水の量は違うし、イワナだって年によって太っていたりやせていたり、大きかったり小さめだったり。バリエーションは無限なのだ。
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天気予報では最終日まで晴れマークだった。しかし初日、夕刻から雨にやられた。初日の泊まり場の前の川は瞬く間に水かさが増え、泥水に。不安げな表情のレイコさん。
「もしもここまで水が来たらどこに逃げるんですか?」
「いや、ここまでは来ないから大丈夫!」
と吐渓。確かに、土砂降りだった昨年もすぐ近くまでは水が上がったけれど、大丈夫だった。しかし、初めてのレイコさん、気が気じゃないのはよくわかる。
翌日は、お昼前に突然の豪雨に襲われ、吐渓がこれ以上進めないと判断し、タープを張った。ここで泊まったら翌日の行程が大変だなあと危惧したが、ほどなくして雨が上がったので再び遡行を再開した。
「あの時は寒くて震えてました。タープを張ってくれたのが本当にありがたかった」(後日、レイコさん談)
それ以外はまずまずの天候だった。

私のトラウマの場所は、2日目の泊まり場、直前の滝。いよいよか、と思うと気が重かった。そして、行ってみると、記憶の中の場所よりはるかに小規模で、それほど難しい場所ではなかった。というより、なんていうことのない岩場だ。だからこそ事故は起きるのだろう。どんな場所でも侮ってはいけない、常に細心の注意と、できうる限りのリスク回避を心がけねばならないと肝に銘じた。そこを抜けて、ようやく私のトラウマはきれいにぬぐわれたのだった。その時、今回は来てよかった、と心から思った。

2日目の泊まりは平らで安全で景色がよくて、最高のロケーションだ。行程的にも最も楽な1日。だからこそ料理にも気合が入るというもの。
ちなみに以下が、今回、調理したメニュー。

●8月5日
☆朝昼 弁当
☆夕食 チタケ飯(チタケは、林道でけっこうな数が採取できた)・イワナ潮汁・イワナ刺身(ワサビ醤油で)・イワナ天ぷら・ゴーヤとハムの炒め物・メロン(今回初参加のガベジ君が背負ってくれた)
●8月6日
☆朝 チタケとナスとタマネギとイワナ天ぷらの炒め丼・漬け物・味噌汁
☆昼 ミズナ入り塩ラーメン・手巻き寿司(釣りする前だったので具はワサビのみ)
☆おやつ スパゲティサラダ(ツナ・タマネギ・ピーマン・バジルソース)
☆夜 トマトソースがけイワナソテー(ソースはナス・タマネギ・ニンニク・ピーマン・トマトペーストで)・イワナ刺身(塩ごま油で)・イワナ潮汁・飯・チーズケーキ(今回、難しい場所でのトップを務めてくれたツトム君がサプライズで持ち込んでくれた)
●8月7日
☆朝 イワナとタマネギの甘辛煮・ミズナと塩昆布の混ぜご飯・味噌汁
☆昼 イワナ入りラーメン・混ぜご飯おにぎり
☆夜 韓国風イワナとミョウガの和え物・イワナのつみれ汁(タマネギ・オクラ入り)・冷や奴(ハウスの本豆腐で)・切り干し大根と油麩の煮物・タマネギとピーマンとコンビーフの炒め物
●8月8日
☆朝 おにぎり・即席グリーンカレースープ

通常、渓ではひとり1日2合、3泊で6合持ち込む。万が一、1日くらい停滞しても食いつなげる量である。ところが、今回はすべて食べ尽くした。最終日、おにぎりは余ったけれど。
それというのも、ガベジ(garbage:ゴミ箱)君がいてくれたおかげである。みんなお腹いっぱいになって残った物は、すべてガベジ君の胃袋に。
「食べちゃってくれる?」
と言うと、キラリンとうれしそうに輝くガベジ君の瞳。おいしそうにきれいさっぱり食べてくれるので気持ちいいのなんの。今回、最も多くの共同装備を背負ってくれた彼のタフさの源だ。里では彼女に厳しい食事制限を課されているそうだが、渓の中だけは解禁させていただいた。ちなみに、下山して最初に入ったラーメン屋では、ラーメンとおかずがセットの定食を勧めたのに、つけ麺だけ。帰宅してからの食事に備え、少しでも胃を小さくしたいとのこと。エライ! かつて5合も食べたというガベジ君にしては驚異的な自制心である。

最終日は、徐々に狭まっていく川筋をたどり、どんどこどんどこ高度を上げて遡り、親指よりも太い根マガリダケが密生するヤブをこぎ、稜線の登山道へ。振り返ると越えてきた渓筋が眼下に広がっている。よくもまあ歩いてきたね、とみんな笑顔。2125mの寺子屋峰まで登って登山道脇の植物園を抜け、高天原に降りるリフトに乗って下ってデポした車が待つ駐車場へ。
そして、私と吐渓、ツトム君、ガベジ君、レイコさんの旅は終わった。

f0207325_1127052.jpg帰宅すると、宅急便の不在通知が。明石に住む叔母から、神戸牛が届いた。やった! 
渓から帰ると無性に肉が食べたくなる。神戸牛でキメだなんて、なんてラッキーなんだ。
よかった。行けてよかった。本当に今回は、胸のつかえが下りてよかった。
ありがとう、おばさん。ありがとう、神戸牛。


渓に在る幸せの余韻が、いまだ続いている。
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by 4433yoshimi | 2010-08-10 11:27